The Wave Vol.37(通刊128号)
1998年5月17日(日)発行
仙台スタジアムを緑に染める号
編集・発行:はぐれ上村組軍団
<以下、表紙記事。1998年5月11日(月)河北新報夕刊一面>
スペシャルワイド
ブランメル仙台のサポーターが練習用ベスト「ビブス」を1万枚作製
東北郵政局と福祉施設が協力/入場者に無料で配布
17日に仙台市泉区の仙台スタジアムで、ジャパン・フットボールリーグ(JFL)
第10節ブランメル仙台−東京ガス戦が行われる。同戦を皮切りに、「われらがブラン
メル」のチームカラー・緑色のビブス(練習用ベスト)1万枚が入場者に無料で配られ
る。サポーターらが企画し、福祉施設などの協力で初めて実現した。ワールドカップ
(W杯)フランス大会ばかりが脚光を浴びる中、ブランメルへの注目度はいまイチ。こ
こは観客席を緑一色に染めて、ブランメルに「活!」。「活が『勝つ』につながって」
と記者は叫びたい。(特報部・成田浩二)
<17、23日と6月に>
ビブスを配布するのは、インターネットを通じブランメル仙台の情報を交換している
サポーターグループ「ブラネッツ」(針生浩信代表)。17日にまず5000枚を配
り、23日のヤマザキナビスコ・カップのサンフレッチェ広島戦で3000枚、6月3
日の同ジュビロ磐田戦で2000枚を配る。ビブスは、その後も着てもらう。
<アントラーズ手本>
企画の発端は、昨年12月に茨城県鹿嶋市で行われたJリーグのサントリー・チャン
ピオンシップ。地元の鹿島アントラーズのチームカラー・赤のビブスを着た観客で埋
まった応援席に「触発された」(サポーターの1人)という。
アントラーズは、Jリーグの中で興行的に成功を収めている。今年3月、アントラー
ズが仙台スタジアムで公式戦をした際、ブラネッツの面々はアントラーズ関係者から応
援を盛り上げる方法を聞き、ビブスの企画を具体化させた。
困ったのはビブスを作る資金。ブランメルの経営母体・東北ハンドレッド(松木伸
一郎社長)は本年度、チーム運営費を前年度の3分の1強に当たる4億8000万円
に切り詰めるなど、厳しいやり繰りを強いられており、資金を出す余裕はなかった。
<障害者の自信にも>
そこで協賛を申し出たのが、東北郵政局の貯金部。地元のスポーツ振興という趣旨に
加え、ビブスの袋詰め作業などを福祉施設「いずみ授産所」(仙台市宮城野区、斎藤米
所長)に委託するブラネッツの計画に共鳴した。「自分たちがかかわったビブスがスタ
ンドを埋めれば、障害者の方々に自信になる」と貯金部。
製作費290万円で、話は実現した。ブラネッツの世話人で、企画を進めてきた仙波
雄一さん(32)は「協力に感謝する。観客席の雰囲気一つで、チームの成績も変わ
る。市民に少しでもサポーター意識に近づいてもらい、一体感のある応援を目指す」と
燃える。
◎“さざ波”にならぬよう1試合6500人の観客ほしい
ビブスを配る計画には、不安もある。第一に、入場者数が相当伸びなければ効果は薄
くなる。
今季、仙台スタジアムで行われたブランメルの公式戦4試合の平均入場者は3400
人。昨年の平均5300人を大きく下回っている。たとえ配っても、緑のウエーブは
「さざ波」に終わる恐れがある。
ブランメルの今季の戦績は11日現在、4勝5敗。不振の原因について東北ハンド
レッドは、仙台スタジアムでシーズン直前、入場料が高いJリーグ公式戦など目玉試合
が3つ行われたため、市民の予算が乏しくなったとみる。
ソニー仙台がJFLに新規参入したことで、地元チームを応援する市民の力が分散し
た可能性もある。また、戦績が振るわないのも客足を鈍らせているらしい。
スタジアムに足を向かせるため、12試合分の料金で15試合が観戦できる「年間シ
ート」の販売や、一定の試合数を観戦すると記念品がもらえる「スタンプラリー」もあ
るが、宣伝不足か、目に見えた効果は上がっていない。
チーム運営を軌道に乗せるには、少なくとも1試合6500人の入場がほしい。勝て
ない時こそ応援が必要。
東北ハンドレッドの久我春雄専務は「会社としては大胆な企画を打てないが、サポー
ターらの自発的な取り組みは心強い。緑に染まるスタンドを契機に、応援の輪が広がる
ことを期待する」と話す。
同社は今回の支援に感謝を込め、17日の試合に、いずみ授産所の入所者らを無料で
招待する予定だ。