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[追跡]TV・芸能 ラジオ聴取率 実態は、もっと濃く熱く 98.07.03 毎日新聞東京本紙朝刊

 ◇民放は最高の局で1.3%と信じられない数字

 ◇それぞれにセールスポイント−−“専門店”パワーだ

 ワールドカップ(W杯)サッカーの中継などテレビの視聴率は話題になるが、あま

り知られていないのがラジオの聴取率だ。民放ラジオ局にとってはこの数字が営業に

直結するのだが、在京7局の場合、一番高い局でも1・3%で、4位からはコンマ以

下である。ある局の幹部が「目の検査じゃあるまいし」と嘆く数字だ。日常生活に果

たすラジオの役割と比べて「低すぎる」というのが実感なのだが、実はそれなりの

「威力」も見せている。【荻野祥三】

 ★年6回調べる

 テレビの世帯視聴率は、受像機に設置された測定機から自動的にデータが送られる

が、土、日を除けば、翌日午前には詳細な視聴率の数字が局に届き、担当者を一喜一

憂させる。

 ラジオにはこうしたオンラインシステムはない。首都圏の場合、東京駅から半径3

5キロ圏に住む12歳から59歳までの男女を選んで偶数の月に調査を行う。4月の

サンプルは2445人。対象者に1週間分の各局の番組名がすべて記載された調査用

紙を配り、どの番組を聴いたか、5分刻みで記録してもらう。自宅か車の中か、それ

以外の場所かも書く。原則としてサンプルを変えて2週間調査する。

 1週間分の調査用紙はかなりの分量で結構面倒な作業だが、謝礼は「テレカード数

枚の金額」(関係者)という。

 ★ニッポンVSTBS

 調査を担当するビデオリサーチ社が現在、6月に行った調査を集計中。目下のとこ

ろ、最新データである4月13日から26日まで実施した調査での在京AM、FMラ

ジオ局の「全日平均聴取率」の順位は別表の通り。この数字、長い間ニッポン放送が

首位を独占していたが、2年ほど前からTBSが肉薄して「同率首位」となり、昨年

4月の調査では「単独首位」。その後奪還されたものの、昨年12月から再び「同率

首位」を続けるなどデッドヒートを続けている。「午前の時間帯が強いのと、女性リ

スナー全体に強いのが有利に働いた」とTBSの担当者は語る。

 それにしても中・下位にある局などはさぞや落胆、と思うのだが、それぞれに“セ

ールスポイント”を見つけてスポンサーやリスナー、他のマスコミにアプローチして

いる。

 例えばバイリンガルパーソナリティーによる英語のDJなどが売り物のJ―WAV

Eは全日平均で0・6%だが、調査結果を分析すると「20代女性では全局中トップ」

「男女大学生でもトップ」という結果が出てくるのだ。これは「局イメージ」づくり

にプラスになるし、スポンサーへの訴求力にもなる。

 ★秘密兵器RVR

 これが可能になるのは2年ほど前に登場したRVR(Rating Vision

 Radio)という解析システム。フロッピーに入った生データをRVRによって

パソコンで分析すると「どの部分で強いか」がたちどころに出てくる。TOKYO―

FMでは「20代男女で24期連続トップ」「10〜30代男女でも14期連続トッ

プ」などと出る。ニッポン放送では「ラジオ4大カテゴリーである男性全体、商工自

営サービス、男子給料生活者、ドライバーで圧倒的占拠率」と発表、文化放送も「月

―金データイム(11〜18時)で全局トップ」「商品購入のキーパーソン・ミセス

に強い」などアピールしている。書店の棚をいっぱいに占拠する雑誌がそれぞれにタ

ーゲットを絞って読者と広告をつかんでいるのと似た現象だ。

 ★人気番組

 なじみのパーソナリティーのワイド番組が好んで聴かれている。4月調査のワイド

番組1週間平均ベストテンは次の通り。

 (1)大沢悠里のゆうゆうワイド(TBS)2・6%(2)森本毅郎・スタンバイ!

(TBS)2・4%(3)高島ひでたけのお早よう!中年探偵団(ニッポン放送)▽

アッコのいいかげんに1000回(同)2・2%(5)永六輔とその新世界(TBS)

2・1%(6)吉田照美のやる気MANMAN!(文化放送)2・0%(7)土曜ニ

ュースプラザ(TBS)1・8%(8)邦ちゃんサクちゃんのワンダフルりくえすと

(ニッポン)1・7(9)荒川強啓デイ・キャッチ!(TBS)▽フライデースーパ

ーカウントダウン50(文化)▽鶴光の噂のゴールデンアワー(ニッポン)1・6%。

山田邦子の新番組や夜の時間帯の「カウントダウン」が入ったのが注目。特に「カウ

ントダウン」は男女とも10代ではトップにランクされている。

 ◇はがき、電話で大きな反響−−調査に反映されず

 ★改善策を検討中

 1位から7位までの局にNHKや首都圏の他のFM局を加えても、全体で7%程度

にしかならない。ラジオ関係者は一様にはがきや電話などの反響から見てもっと聴か

れているはずで、それが聴取率調査に反映されていないという。現代社会でのメディ

アとの接触は、テレビでもリモコンであちこちとチャンネルを変え「何の番組を見た

のか紙に書いて」と言われても困難な状況だ。

 まして通勤電車やマイカー、タクシーのなかなどで聴いたラジオ番組を5分単位で

記録することが、どの程度まで「聴取実態」に近いものなのか。聴いたという意識は

あっても、どの局のどの番組かまでは記憶できない場合も結構ある。こうした点から

ラジオ局側も現在、調査会社と改善策を話し合っている。

 例えば、車のラジオにはテレビの測定機のようなものを接続できないか。サンプル

となった人に電子手帳などで忘れないうちに入力してもらえないかなどの提案も話し

合われている模様だ。そのうえ、ラジオもデジタル多チャンネル化するそう遠くない

うちに全面的な見直しが必要となるだろう。

 ◇4月調査の全日平均聴取率=民放(午前6時〜深夜0時)

(1)ニッポン放送

   TBS      1・3%

(3)文化放送     1・0%

(4)TOKYO―FM 0・8%

(5)J―WAVE   0・6%

(6)ラジオ日本    0・2%

(7)inter―FM 0・1%

 

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